季語さんぽ
2024.10.29
〜泡立草〜 秋
宮島線の線路わきです。鮮やかな黄色が花粉を連想させ、花粉症の原因だと濡衣を着せられたとか。秋の麒麟草とも。
胸中に嘘あたためて泡立草
青柳志解樹
2024.10.27
〜芒〜 秋
萩 桔梗 葛 藤袴 女郎花 尾花 撫子。秋の七草のひとつ。尾花と呼ばれるのは、動物の尾に似ているから。
をりとりてはらりとおもきすすきかな
飯田蛇笏
2024.10.21
〜新松子〜 晩秋
しんちぢりと読みます。今年できた新しい松笠(ちちり)のこと。青くみずみずしく、言葉の印象もかわいらしい。
一湾のひかりに育つ新松子
福川悠子
2024.10.13
〜木犀〜 晩秋
ずっとずっと待っていました。咲いてくれて、ありがとう。犀の文字が入っているのは、幹の紋理が犀の皮に似ているから。
金木犀手毬全円子へ弾む
野澤節子
2024.10.11
〜曼珠沙華〜 仲秋
秋のお彼岸の頃に咲くから彼岸花と呼ばれるのに、やはり今年は遅かったです。マンジュシャカはサンスクリット語で、赤いという意味。
まんじゅさげ暮れてそのさきもう見えぬ
大野林火
2024.10.8
〜棉の花〜 晩夏
10月になってやっと咲いた、棉の花。残暑の影響でしょうか。気味がかった白で、咲いたときがいちばん美しく、夕方には薄紅に。
雲よりも棉はしづかに咲きにけり
福島小蕾
2024.910.3
〜コスモス〜 仲秋
コスモスの語源はギリシャ語で、調和や秩序を表します。花びらが規則正しく並ぶことから、コスモスと呼ばれるようになったそう。宇宙をコスモスと呼んだのは、ピタゴラス。
晴天やコスモスの影撒きちらし
鈴木花蓑
2024.9.29
〜無花果〜 晩秋
子どもの頃は苦手だった無花果が、今はとても美味しい。おとなになるって不思議。実の中に花が咲くのも不思議。
葉にのせていちじくを売る朝の市
八巻絹子
2024.9.22
〜名月〜 仲秋
陰暦8月15日の満月のこと。2024年の仲秋の名月は、9月17日でした。夜が更けると、雲に隠れていました。
名月や君かねてより寝ぬ病
太祇
2024.9.10
〜秋の虹〜 秋
あっ、虹。夕暮れの東の空に、ほんのちょっぴり。
秋の虹人に告げれば消えにけり
日下野仁美
2024.9.1
〜露草〜 初秋
露草は露がある間咲く半日花で、月草、蛍草など、たくさんの名をもちます。露草からとった「青花」は水に溶けやすいので、友禅の下絵に使われます。
露草や隠し湯多き甲斐の国
大室貢
2024.8.25
〜花火〜 晩夏
はじまりは、1733年の両国の花火でした。最近は宮島の花火大会が開催されなくなり寂しいですが、商工センターで上がっていました。
空に延ぶ花火の途の曲りつつ
高浜虚子
2024.8.22
〜秋の夕焼〜 秋
単に夕焼と言うと夏の季語ですが、秋の夕焼は、儚さや寂しさ、懐かしさを秘めています。雲を染め、海に移る様子は変化に富んでいます。
秋夕焼わが溜息に褪せゆけり
相馬遷子
2024.8.17
〜夾竹桃〜 晩夏
原爆により70年は草木が生えないと言われた広島に、最初に咲いた花として知られています。炎暑にも花が絶えません。
夾竹桃寺の隣に寺があり
丘本風彦
2024.8.11
〜熱帯魚〜 夏
写真の熱帯魚はネオンテトラとラミーノーズテトラ。ラミーノーズとは、「酔っぱらいの鼻」の意味。立秋を過ぎましたが、まだまだ暑いです。
熱帯魚石火のごとくとびちれる
山口青邨
2024.8.7
〜原爆忌〜 晩夏
79回目の原爆忌でした。
原爆忌乾けば棘をもつタオル
横山房子
2024.8,5
〜ヨット〜 夏
青い空、白い雲、青い海、白いセール、色のコントラストが美しい、夏のスポーツです。パリオリンピックでも、セーリングの種目で、日本のチームが活躍しました。
滑車鳴れば揚がりヨットの帆となりぬ
五十嵐播水
2024.7.28
〜空蝉〜 晩夏
毎日、蝉がさかんに鳴いています。空蝉は蝉の抜殻。源氏物語の空蝉は、光源氏の手に薄衣を残し、姿を消してしまいます…。
空蝉を置いて白紙に翳り生む
鍵和田秞子
2024.7.24
〜扇風機〜 夏
子どもの頃は、扇風機に向かって「あーー」と声を震わせていたものでした。大人になったら、なぜかしなくなりました。今は、羽のない扇風機もありますね。
扇風機好むインコの喋り出す
堀口星民
2024.7.19
〜祭〜 夏
住吉神社のお祭りです。祭と言えば夏の季語。他の季節の祭は春祭、秋祭と呼んで、区別します。川風が心地よく、暑さを忘れました。
神田川祭の中をながれけり
久保田万太郎
2024.7.19
〜心太〜 夏
俳句仲間の手作り心太をいただきました。海にあるてんぐさは赤く、煮ると赤みが消えてゆくのだそうです。楓の葉が添えてあるのも涼しげ。
心太煙のごとく沈みをり
日野草城
2024.7.12
〜烏賊釣〜 夏
遠くに見えるのは烏賊釣舟の光。小魚、烏賊、大きな魚、そして虫も、光に集まってきます。
烏賊釣火沖ゆらぐごと増えにけり
大澤ひろし
2024.7.9
〜香水〜 夏
廿日市市にある「海の見える杜美術館」には香水瓶の展示室があり、小さくて美しい器が並んでいます。香水は夏の身だしなみで、夏の季語。
香水の香の内側に安眠す
桂信子
2024.7.7
〜滝〜 夏
7月7日は自得先生の忌日、七夕忌。法要と吟行俳句会を行いました。三滝寺の三つの滝は、幽明の滝、梵音の滝、駒が滝。よい空気、澄んだ水、木々の緑、五感が癒されました。
静かにも人群れてをり滝の前
山田みづえ
2024.7.5
〜梅雨茸〜 仲夏
梅雨の頃、足元をよーく見ると、あっ、きのこ。さまざまな種類があるようで、魅力を感じますが、食用にならないものがほとんどです。
梅雨茸安部晴明墓の前
黒田咲子
2024.7.3
〜ナイター〜 夏
日本で初めてのナイターは、昭和23年8月17日ゲーリック球場(横浜)で行われた、ジャイアンツ対ドラゴンズ戦。8/17は「プロ野球ナイター記念日」だそうです。
ナイターの灯に吸はれゆく大ファウル
稲畑廣太郎
2024.6.30
〜夏越 茅の輪〜 晩夏
草津八幡宮。表参道の一八九段の石段は、飛躍、避厄に通ずるそうです。七夕竹もありました。
まつすぐに汐風とほる茅の輪かな
名取里美
2024.6.23
〜紫陽花〜 仲夏
観音寺には400種類5000株の紫陽花があるそうです。根を張った土の質によって、花の色が変わります。
あぢさゐの色にはじまる子の日記
稲畑汀子
2024.6.23
〜五月雨〜 仲夏
中国地方も昨日やっと梅雨入りしました。梅雨は主にその時期を、五月雨は雨そのものを言います。古くより愛された季語です。
五月雨やいつもおくれて鳴る時計
蕪木啓子
2024.6.18
〜松葉菊〜 夏
鮮やかなピンクを見ると、なぜか元気が出ます。多肉質な葉を持ち乾燥に強いので、仙人掌菊と呼ばれるのもわかります。
浜の床屋の鏡の中に松葉菊
滝春一
2024.6.16
〜キャベツ〜 初夏
1年中店頭に見られ、さまざまな料理にも付け合わせにもなるキャベツ。花が咲く前に食べてしまうけれど、アブラナ科アブラナ属、菜の花の仲間。甘藍、玉菜、という呼び名もあります。
白鳥の翅もくごとくキャベツ挘ぐ
能村登四郎
2024.6.13
〜時鳥(ほととぎす)〜 夏
古の貴族の間では、魂を奪うと畏怖され、農民の間では、田植えを促すとして親しまれたらしい。子規、杜鵑、不如帰、など漢字もいろいろ。
天近き田も水足らひほととぎず
藤田湘子
2024.6.10
〜梔子(くちなし)の花〜 仲夏
真っ白な六弁の花、甘い甘い香り。雨が降ると咲くような、咲くと雨が降るような…。秋には美しい実が成ります。
口なしの花はや文の褪せるごと
中村草田男
2024.6.7
〜夏の蝶〜 夏
蝶といえば春の季題ですが、夏の蝶は大きいものが多く、夏らしい強さ、激しさをもっています。この蝶はすこし翅が傷ついています…。鶯も鳴いています。
つまみたる夏蝶トランプの厚さ
高柳克弘
2024.6.5
〜泰山木〜 初夏
花の径は20センチを超えるものもあり、蕊は仏にたとえられることもあるとか。大きな木に上向きに咲くから、下からは見えにくい、神秘の花。
酌み交はす泰山木の香の中で
草間時彦
2024.5.31
〜海芋〜 初夏
風土記植物園の水辺にて。カラーと呼ばれるのは、漏斗状の仏炎苞が修道女の襟に似ていることからとも。海芋の白は濃い白。
海芋大きく活けてマキシム帽子店
三宅絹子
2024.5.28
〜紫蘭〜 初夏
紫蘭は鑑賞もさることながら、その鱗茎は漢方薬の材料となるそうです。一畑薬師は、目のお薬師さま。幼いころ、水木しげるがのんのんばあと通ったことでも有名です。
雨を見て眉重くゐる紫蘭かな
岡本眸
2024.5.26
〜楝(おうち)の花〜 初夏
朴の花を探したけれど見つからず、掃き掃除をしておられた男性に尋ねても見かけないよと言われ、楝の花を見てきました。元安川沿いに咲いています。2号線からも、美しい淡紫の花が夢のように咲いているのが見えます。
花あふち梢のさやぎしづまらぬ
橋本多佳子