

季語さんぽ


2025.2.24
〜水仙〜 晩冬
ギリシャ神話の美少年ナルキッソスは、泉に映った自分の姿に恋焦がれ、死んでしまいました。そのあとに咲いていたのが水仙で、雪中花とも呼ばれます。
一茎の水仙の花相背く
大橋越央子

2025.2.14
〜枇杷の花〜 冬
花のすくない冬、柔毛に覆われた萼から白い花が咲きます。目立たない花ですが、甘い匂いに誘われて、ひよどりが来ていました。
枇杷の花休息もまたわがつとめ
古賀まり子

2025.2.10
〜焼鳥〜 冬
冬の鳥は美味で、かつては雀や鴨、鶫など、食べていたようです。今では、一年中食べられる鶏肉も、冬は脂がのり、うまみが増します。
焼鳥に生きる楽しさなどを言ふ
細川加賀

2025.2.6
〜春の雪〜 春
春の雪は溶けやすい淡雪で、ときには大きな牡丹雪になることもあります。古来より雪月花は自然美の代表ですが、雪に慣れない私たちは 慌ててしまいます。くれぐれも、ご用心。
春雪三日祭の如く過ぎにけり
石田波郷

2025.1.31
〜冬の星〜 冬
澄んだ空気を通して鋭く近く見える冬の星は、寒星、荒星、凍星などとも呼ばれます。あ、オリオン座。
かぞえゐるうちに殖えくる冬の星
上田五千石

2025.1.20
〜餅搗〜 仲冬
本来は、年末に隣近所や親せきが集まって、お正月のためのお餅を搗きました。今では、機械で搗いたお餅を買うようになりました。
餅つきや焚火のうつる嫁の㒵
召波

2025.1.17
〜蠟梅〜 晩冬
かわいい!こんなに寒いのに、温かみを感じます。蠟細工のようだから、蠟梅。花の内部まで黄色いものを「素心蠟梅」と呼びます。鈴が峰山にて。
蠟梅の蕾の数が花の数
倉田紘文

2025.1.12
〜左義長〜 新年
無病息災や書道の上達を祈って、正月飾りや書初めを焚く火祭の行事。激しい火音や囃し言葉から、とんど、どんどとも呼ばれます。
谷水を撒きてしづむるどんどかな
芝不器男

2025.1.8
〜七草粥〜 新年
1月7日に七種の若菜を入れて粥を食べる風習は、平安時代より始まりました。万病を除くとされ、食べ過ぎ飲み過ぎがちの現代人の胃腸にも優しそうです。
糸底の掌にこそばゆし七日粥
石田あき子

2025.1.4
〜初日〜 新年
1月1日の日の出、また、その光のこと。普段は数人しか出会わない鈴が峰山頂にも、百人以上登っていました。
鶏百羽白き胸張り初日待つ
大槻九合草

2024.12.28
〜葉牡丹〜 晩冬
お正月の花壇や鉢植え、生け花として喜ばれる葉牡丹は、きゃべつが観賞用に改良されたもの。葉の重なりが牡丹のようで、葉牡丹と呼ばれます。
葉牡丹の下にいつもの隠し鍵
鷹羽狩行

2024.12.23
〜冬すみれ〜 晩冬
かわいい。かわいすぎます。すみれは早春の花ですが、鈴が峰山でもう咲いていました、こもれびが当たっています。
古きよきころのいろして冬すみれ
飯田龍太

2024.12.16
〜冬の月〜 冬
冬の月は、すさまじく、さびしく、美しく、透徹しています。寒月といえば、さらに凍てついた感じです。
寒月や耳光らせて僧の群
中川宋淵

2024.12,10
〜冬晴〜 冬
世界遺産宮島の弥山頂上(535メートル)へ、紅葉谷コースを登りました。心が洗われるような、穏やかで美しい眺め。冬日和、冬麗とも。
冬麗口紅のこる微笑仏
古館曹人

2024.12.6
〜石蕗の花〜 初冬
清涼感のある香りで、花のあとにはたんぽぽみたいな絮ができます。江戸時代の書物によると、春のやわらかい茎を食べると毒が消えるそうです。
石蕗の花禅の時間の流れをる
堀内薫

2024.12.3
〜紅葉 黄葉〜 晩秋
赤く染まるものも、黄色に染まるものも、もみじと呼びます。紅葉する楓がその名を専有するようになりましたが、楓と限らず、葉の染まるものすべてが含まれます。
渓紅葉真紅の妻の振りかへる
落合水尾

2024.11.30
〜皇帝ダリア〜 晩秋
2019年発行の歳時記に載ったという、新しい季語です。茎は中が空洞で、太く高く伸び、日が短くなると花芽がつきます。京橋川の土手に咲いています。
皇帝ダリア恐るるもののなき高さ
片山由美子

2024.11.23
〜冬の虹〜 冬
虹は夏にもっとも多く、春・秋がこれに次ぎ、冬がもっとも少ない。まれに現れる冬の虹は、鮮明で、神秘さを伴い、とりわけ美しく見える。
冬虹やまろき幼きバレリーナ
檜原敏子

2024.11.20
〜竜胆〜 仲秋
りんだうは枝ざしなどもむつかしけれど、こと花どものみな霜枯れたるに、いとはなやかなる色あひにてさし出でたる、いとをかし「枕草子」
竜胆を前の二人は見ずに行く
内野修

2024.11.17
〜秋明菊〜 仲秋
北鎌倉、円覚寺にて。菊に似ているけれど、アネモネの仲間。京都貴船山あたりに多く自生するので、貴船菊とも呼ばれます。美しい白です。
まつ白な僧衣の干され貴船菊
萩原起代子

2024.11.14
〜茶の花〜 初冬
葉の陰に咲く、椿の赤ちゃんみたいな小さな花から、豊かな蕊が溢れてきます。利休さんも好んだ花。
茶の花が咲けり土曜に辿りつく
千代田葛彦

2024.11.10
〜南五味子〜 晩秋
小さな球が集まって、実になっています。実は漢方に用いられ、茎からとる粘液を頭髪油の代わりにしたので、美男葛とも呼ばれます。
垣結うてまた掛けておくさねかずら
粟津松彩子

2024.11.1
〜杜鵑草〜 仲秋
ユリ科の多年草で、赤紫色の斑点が時鳥(ほととぎす)の胸毛の斑点に似ている ことから、この名がついた。茶花でもある。
あるじなき後のつくばひ杜鵑草
佐藤鬼房

2024.10.29
〜泡立草〜 秋
宮島線の線路わきです。鮮やかな黄色が花粉を連想させ、花粉症の原因だと濡衣を着せられたとか。秋の麒麟草とも。
胸中に嘘あたためて泡立草
青柳志解樹

2024.10.27
〜芒〜 秋
萩 桔梗 葛 藤袴 女郎花 尾花 撫子。秋の七草のひとつ。尾花と呼ばれるのは、動物の尾に似ているから。
をりとりてはらりとおもきすすきかな
飯田蛇笏

2024.10.21
〜新松子〜 晩秋
しんちぢりと読みます。今年できた新しい松笠(ちちり)のこと。青くみずみずし く、言葉の印象もかわいらしい。
一湾のひかりに育つ新松子
福川悠子

2024.10.13
〜木犀〜 晩秋
ずっとずっと待っていました。咲いてくれて、ありがとう。犀の文字が入っているのは、幹の紋理が犀の皮に似ているから。
金木犀手毬全円子へ弾む
野澤節子

2024.10.11
〜曼珠沙華〜 仲秋
秋のお彼岸の頃に咲くから彼岸花と呼ばれるのに、やはり今年は遅かったです。マンジュシャカはサンスクリット語で、赤いという意味。
まんじゅさげ暮れてそのさきもう見えぬ
大野林火

2024.10.8
〜棉の花〜 晩夏
10月になってやっと咲いた、棉の花。残暑の影響でしょうか。気味がかった白で、咲いたときがいちばん美しく、夕方には薄紅に。
雲よりも棉はしづかに咲きにけり
福島小蕾

2024.910.3
〜コスモス〜 仲秋
コスモスの語源はギリシャ語で、調和や秩序を表します。花びらが規則正しく並ぶことから、コスモスと呼ばれるようになったそう。宇宙をコスモスと呼んだのは、ピタゴラス。
晴天やコスモスの影撒きちらし
鈴木花蓑

2024.9.29
〜無花果〜 晩秋
子どもの頃は苦手だった無 花果が、今はとても美味しい。おとなになるって不思議。実の中に花が咲くのも不思議。
葉にのせていちじくを売る朝の市
八巻絹子

2024.9.22
〜名月〜 仲秋
陰暦8月15日の満月のこと。2024年の仲秋の名月は、9月17日でした。夜が更けると、雲に隠れていました。
名月や君かねてより寝ぬ病
太祇

2024.9.10
〜秋の虹〜 秋
あっ、虹。夕暮れの東の空に、ほんのちょっぴり。
秋の虹人に告げれば消えにけり
日下野仁美

2024.9.1
〜露草〜 初秋
露草は露がある間咲く半日花で、月草、蛍草など、たくさんの名をもちます。露草からとった「青花」は水に溶けやすいので、友禅の下絵に使われます。
露草や隠し湯多き甲斐の国
大室貢

2024.8.25
〜花火〜 晩夏
はじまりは、1733年の両国の花火でした。最近は宮島の花火大会が開催されなくなり寂しいですが、商工センターで上がっていました。
空に延ぶ花火の途の曲りつつ
高浜虚子

2024.8.22
〜秋の夕焼〜 秋
単に夕焼と言うと夏の季語ですが、秋の夕焼は、儚さや寂しさ、懐かしさを秘めています。雲を染め、海に移る様子は変化に富んでいます。
秋夕焼わが溜息に褪せゆけり
相馬遷子

2024.8.17
〜夾竹桃〜 晩夏
原爆により70年は草木が生えないと言われた広島に、最初に咲いた花として知られています。炎暑にも花が絶えません。
夾竹桃寺の隣に寺があり
丘本風彦

2024.8.11
〜熱帯魚〜 夏
写真の熱帯魚はネオンテトラとラミーノーズテトラ。ラミーノーズとは、「酔っぱらいの鼻」の意味。立秋を過ぎましたが、まだまだ暑いです。
熱帯魚石火のごとくとびちれる
山口青邨

2024.8.7
〜原爆忌〜 晩夏
79回目の原爆忌でした。
原爆忌乾けば棘をもつタオル
横山房子

2024.8,5
〜ヨット〜 夏
青い空、白い雲、青い海、白いセール、色のコントラストが美しい、夏のスポーツです。パリオリンピックでも、セーリングの種目で、日本のチームが活躍しました。
滑車鳴れば揚がりヨットの帆となりぬ
五十嵐播水

2024.7.28
〜空蝉〜 晩夏
毎日、蝉がさかんに鳴いています。空蝉は蝉の抜殻。源氏物語の空蝉は、光源氏の手に薄衣を残し、姿を消してしまいます…。
空蝉を置いて白紙に翳り生む
鍵和田秞子

2024.7.24
〜扇風機〜 夏
子どもの頃は、扇風機に向かって「あーー」と声を震わせていたものでした。大人になったら、なぜかしなくなりました。今は、羽のない扇風機もありますね。
扇風機好むインコの喋り出す
堀口星民

2024.7.19
〜祭〜 夏
住吉神社のお祭りです。祭と言えば夏の季語。他の季節の祭は春祭、秋祭と呼んで、区別します。川風が心地よく、暑さを忘れました。
神田川祭の中をながれけり
久保田万太郎

2024.7.19
〜心太〜 夏
俳句仲間の手作り心太をいただきました。海にあるてんぐさは赤く、煮ると赤みが消えてゆくのだそうです。楓の葉が添えてあるのも涼しげ。
心太煙のごとく沈みをり
日野草城

2024.7.12
〜烏賊釣〜 夏
遠くに見えるのは烏賊釣舟の光。小魚、烏賊、大きな魚、そして虫も、光に集まってきます。
烏賊釣火沖ゆらぐごと増えにけり
大澤ひろし

2024.7.9
〜香水〜 夏
廿日市市にある「海の見える杜美術館」には香水瓶の展示室があり、小さくて美しい器が並んでいます。香水は夏の身だしなみで、夏の季語。
香水の香の内側に安眠す
桂信子

2024.7.7
〜滝〜 夏
7月7日は自得先生の忌日、七夕忌。法要と吟行俳句会を行いました。三滝寺の三つの滝は、幽明の滝、梵音の滝、駒が滝。よい空気、澄んだ水、木々の緑、五感が癒されました。
静かにも人群れてをり滝の前
山田みづえ

2024.7.5
〜梅雨茸〜 仲夏
梅雨の頃、足元をよーく見ると、あっ、きのこ。さまざまな種類があるようで、魅力を感じますが、食用にならないものがほとんどです。
梅雨茸安部晴明墓の前
黒田咲子

2024.7.3
〜ナイター〜 夏
日本で初めてのナイターは、昭和23年8月17日ゲーリック球場(横浜)で行われた、ジャイアンツ対ドラゴンズ戦。8/17は「プロ野球ナイター記念日」だそうです。
ナイターの灯に吸はれゆく大ファウル
稲畑廣太郎

2024.6.30
〜夏越 茅の輪〜 晩夏
草津八幡宮。表参道の一八九段の石段は、飛躍、避厄に通ずるそうです。七夕竹もありました。
まつすぐに汐風とほる茅の輪かな
名取里美

2024.6.23
〜紫陽花〜 仲夏
観音寺には400種類5000株の紫陽花があるそうです。根を張った土の質によって、花の色が変わります。
あぢさゐの色にはじまる子の日記
稲畑汀子

2024.6.23
〜五月雨〜 仲夏
中国地方も昨日やっと梅雨入りしました。梅雨は主にその時期を、五月雨は雨そのものを言います。古くより愛された季語です。
五月雨やいつもおくれて鳴る時計
蕪木啓子

2024.6.18
〜松葉菊〜 夏
鮮やかなピンクを見ると、なぜか元気が出ます。多肉質な葉を持ち乾燥に強いので、仙人掌菊と呼ばれるのもわかります。
浜の床屋の鏡の中に松葉菊
滝春一

2024.6.16
〜キャベツ〜 初夏
1年中店頭に見られ、さまざまな料理にも付け合わせにもなるキャベツ。花が咲く前に食べてしまうけれど、アブラナ科アブラナ属、菜の花の仲間。甘藍、玉菜、という呼び名もあります。
白鳥の翅もくごとくキャベツ挘ぐ
能村登四郎

2024.6.13
〜時鳥(ほととぎす)〜 夏
古の貴族の間では、魂を奪うと畏怖され、農民の間では、田植えを促すとして親しまれたらしい。子規、杜鵑、不如帰、など漢字もいろいろ。
天近き田も水足らひほととぎず
藤田湘子

2024.6.10
〜梔子(くちなし)の花〜 仲夏
真っ白な六弁の花、甘い甘い香り。雨が降ると咲くような、咲くと雨が降るような…。秋には美しい実が成ります。
口なしの花はや文の褪せるごと
中村草田男

2024.6.7
〜夏の蝶〜 夏
蝶といえば春の季題ですが、夏の蝶は大きいものが多く、夏らしい 強さ、激しさをもっています。この蝶はすこし翅が傷ついています…。鶯も鳴いています。
つまみたる夏蝶トランプの厚さ
高柳克弘

2024.6.5
〜泰山木〜 初夏
花の径は20センチを超えるものもあり、蕊は仏にたとえられることもあるとか。大きな木に上向きに咲くから、下からは見えにくい、神秘の花。
酌み交はす泰山木の香の中で
草間時彦

2024.5.31
〜海芋〜 初夏
風土記植物園の水辺にて。カラーと呼ばれるのは、漏斗状の仏炎苞が修道女の襟に似ていることからとも。海芋の白は濃い白。
海芋大きく活けてマキシム帽子店
三宅絹子

2024.5.28
〜紫蘭〜 初夏
紫蘭は鑑賞もさることながら、その鱗茎は漢方薬の材料となるそうです。一畑薬師は、目のお薬師さま。幼いころ、水木しげるがのんのんばあと通ったことでも有名です。
雨を見て眉重くゐる紫蘭かな
岡本眸

2024.5.26
〜楝(おうち)の花〜 初夏
朴の花を探したけれど見つからず、掃き掃除をしておられた男性に尋ねても見かけないよと言われ、楝の花を見てきました。元安川沿いに咲いています。2号線からも、美しい淡紫の花が夢のように咲いているのが見えます。
花あふち梢のさやぎしづまらぬ
橋本多佳子